宗教について 〜 人の生と死を考える 注52

公開: 2023年3月18日

更新: 2023年4月11日

注52. 政治家の嘘

1990年代末、米国社会で大統領の不倫が問題になりました。大統領が、インターンシップで事務作業を手伝っていた大学生と不倫行為をしたことが、別の秘書の密告から暴露されました。最初、大統領は、記者からの追求に対して、あいまいな説明をしていました。

議会での弾劾裁判に追い込まれつつあった大統領は、テレビ放送で問題の不倫を認め、国民に対して謝罪をしました。謝罪では、「自分は妻を裏切り、インターン生と不適切な関係を持ちました。」と証言しました。大統領は、不適切な関係を持ったが、肉体関係は持っていないことを、暗に強調しました。自分を守るが、嘘をつかないようにしたと考えられています。

日本の場合、政治的な問題が発覚しても、日本の政治家は、ほとんどの場合、そのことを認めません。政治家の言葉は、「世間をお騒がせして申し訳ありませんでした。」「私に徳がありませんでした。」と言う弁明がほとんどです。これは、日本社会が嘘に対して、許容度が高いからだと思われます。日本社会の人々は、政治家化が嘘をついていると思いながらも、「謝っている」と理解して、許しているのでしょう。

2010年代ごろから、米国社会に変化が起き、大統領の流す情報の嘘が、たびたびマスメディアで問題にされましたが、大統領本人も大統領を支持する国民も、「それはマスメディアが作り上げたデマ情報である」と主張するようになりました。「フェークニュース」や「ポストトゥルース」と言う新語が作り出されました。大統領と、大統領を支持している一部の国民には、大統領が語っていることこそが、「真実」だと信じられるようになりました。

この米国社会に見られる現象は、インターネットに発信される情報の真偽を判定することが難しく、マスメティアでは、証言を洗い出して、真偽を確認するのに対して、個人から報じられる情報の中には、未確認の情報が紛れ込んでいるからです。未確認の情報でも、インターネット上に流され、一度、広まった情報は、多くの人々が「真実」だと誤認する傾向があるからです。一部の政治家は、この傾向を利用して、自分の保身に使っているようです。

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